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赤ちゃんの枕はいつから使う?目安の時期や枕を選ぶときのポイント

監修:古市 菜緒

プロフィール

助産師としてこれまで10,000件以上の出産に携わり、5,000人以上の方を対象に産前・産後セミナー等の講師を務める。助産師のレベルが世界的に高いAUSとNZで数年生活、帰国後バースコンサルタントを起ち上げる。現在は、高齢出産の対象であるOVER35の方にむけた「妊娠・出産・育児」をサポートする活動を行う。その他、関連する記事の執筆やサービス・商品の監修、企業のセミナー講師、産科病院のコンサルタントなどを務める。

インターネットで「赤ちゃん 枕」と検索すると、実に様々な情報に出くわします。子育て情報サイトの記事を読むと、「枕の使用は生後3か月ごろから」「1歳未満に枕は不要」などと、サイトによってまったく違う情報が掲載されていることも多くあります。一方、ベビー用品の販売店やオンラインショップでは、新生児用も含む低月齢の赤ちゃん用の様々な枕が商品化され、販売されています。「どの情報を信じればいいの?」「枕はいつから使っていいの?」と迷ってしまうママ・パパも多いのではないでしょうか。

そこで今回の記事では、赤ちゃんが枕を使う目安の時期、枕の選び方などを、それぞれの理由と共に紹介します。
最初に結論をいえば、新生児期(生後28日未満)の赤ちゃんには、基本的に枕は必要ありません。なぜなら、枕の役割は背骨の生理的湾曲(S字カーブ)に合わせて首元に負担がかからないようにすることだからです。ママの丸い子宮で育った生まれたばかりの赤ちゃんの背骨は丸いCカーブ状なので  、枕がなくても首に負担なく寝ることができます。また、枕は睡眠中の窒息事故のリスクにもなるため、月齢を重ねてから使用したほうがよいのです。では、まずは枕使用の目安の時期について具体的に説明していきましょう。

赤ちゃんの枕はいつから必要?


赤ちゃんの枕はいつから必要?

ここでは「赤ちゃんが枕を使いはじめる時期の目安」について解説します。導入で紹介したように、背骨のS字カーブの形成過程と窒息事故のリスクが時期の目安に大きく関係します。

ただし頭の変形や吐き戻しなどの心配がある場合は、目安の時期よりも早く枕が使われるケースもあるため、合わせて紹介しましょう。


●赤ちゃんの体の成長からみた時期の目安


背骨のS字カーブが完成するのは13歳ごろですが、まず首が座る生後3か月~4か月ごろに首のカーブ、腰が座る生後8か月~9か月ごろに背骨のカーブができはじめ、その後10年以上かけてS字カーブが形成される流れになるのです。
上記の流れを考慮すると、枕の使用を検討するタイミングは、寝返りもスムーズにできるようになる1歳頃から、寝ている様子をみながらでよいでしょう。首が座る生後3~4か月というタイミングも考えられますが、赤ちゃんは枕がなくても眠ることができますし、窒息事故のリスクもあるとなれば無理に急いで使う必要はありません。

生後8か月~9か月は、うつぶせに寝返っても仰向けに戻る「寝返り返り」やハイハイができる赤ちゃんも多くなってきます。ただし、首や腰の座り、寝返り、寝返り返り、ハイハイの時期は個人差も大きいので月齢にとらわれずお子さんの成長に合わせて、枕の検討をしていきます。

●頭の変形や吐き戻しによる窒息が心配な場合

上記のように「1歳頃」が枕の使用を検討しはじめる時期の目安になりますが、頭の変形や吐き戻しによる窒息が心配な場合は、目安よりも早い時期に枕を使用するケースもあります。

赤ちゃんの頭は6か月くらいから徐々に固まりはじめ、吐き戻しは生後4か月~5か月には治まることが多いため、ドーナツ型の枕や傾斜型の枕を生後3か月前後から使う例がみられます。いずれも安全性との兼ね合いになり、ママ・パパの目が届く日中などに使用するのがよいでしょう。詳しくは次の「【目的別】赤ちゃん用の枕の役割と形状タイプ」で紹介します。

【目的別】赤ちゃん用の枕の役割と形状タイプ


ベビー用の枕には、頭の形を整える、吐き戻しを防ぐなどの目的に応じて、ドーナツ型やくぼみ型、傾斜型など様々な形状のタイプがあります。ドーナツ型で授乳枕としても使える2wayタイプなどの便利な商品も人気です。ここでは目的別に赤ちゃん用の枕の種類と役割を紹介します。

ただし、目安よりも早い時期の使用については十分な注意が必要です。ママ・パパがこまめに赤ちゃんの様子をチェックできる時間帯に使いましょう。


●頭の形を整えるため


生まれたばかりの赤ちゃんの頭はやわらかく、自分の力で首を動かすことができないため常に同じ姿勢をキープして寝ていると頭の形が歪む場合があります。

特に心配されるのは、次の1)~3)の変形です。
1)仰向けでずっと寝ていることによる後頭部の平坦化(絶壁)
2)左右差の出現
3)向き癖による左右どちらかの側頭部の平坦化(斜頭)

赤ちゃんの頭は生後6か月を過ぎると徐々に固まりはじめ、1歳ごろには形がほぼ固定化されるため、ベビー用のドーナツ型枕(ドーナツ枕)を使用することがあります。頭の一部分にかかる圧力を適度に分散して頭の変形を防ぎ、形を整えることが目的です。頭が横向きになるのを防いで左右差ができないようにする目的もあります。しかしドーナツ枕が頭の変形の予防に有効かどうかは科学的な根拠がなく、前述のとおり窒息事故のリスクも排除できないため、使用については賛否両論あるのが現状です。

実際のところ、軽度の頭の歪みは成長に伴って自然に改善されることが多く、髪が伸びれば目立たなくもなるため、過剰に心配する必要はないとされています。

頭の変形を防ぐためには、
・目の届く日中に定期的に体位変換する ※腹臥位(うつぶせ)では寝かさないように注意
・様々な向きで抱っこしたり授乳したりする
・向き癖とは反対の方から声をかける、興味があるものを配置する
・1日数回、見守りながらうつぶせで遊ばせる(タミータイム)
──など、枕以外の方法もあるため、医師や助産師などに相談してみましょう  。

◎くぼみ型のベビー枕
ドーナツ枕と同様、頭の形を整える目的で使われる「くぼみ型」のベビー枕もあります。一般の枕と同じ長方形で中央が少しくぼんだタイプです。くぼみ型のベビー枕は、大きめのものを選べばキッズ枕としても使えるため、長く使用できるメリットがあります。実際、生後8か月ごろから3歳まで使える枕も市販されています。このほか赤ちゃんの頭の形に合わせて沈む低反発枕も、くぼみ型ベビー枕と同様の目的で使用されます。

●吐き戻しを防ぐため

頭側に少し高さをつけて上半身を10度ほど傾斜させ、ミルクの逆流を防ぐための枕です。吐き戻し防止枕、傾斜枕などと呼ばれています。
赤ちゃんは消化器が未成熟で、飲んだミルクが逆流しやすい特徴があるため、もし夜間に激しい吐き戻しがみられるようなら窒息などのリスクが生じます。日ごろから吐き戻しの多い赤ちゃんの場合、使用を検討してみるとよいでしょう。医師や助産師などに相談するのもよいです。

様々なタイプが販売されていますが、ベビーベッドのマットレスと同じくらいの硬さのクッション素材でできており、マットレスと同じくらいの横幅をもつ大きいサイズで、赤ちゃんの上半身全体を起こしてくれる傾斜枕がおすすめです。

赤ちゃん用の枕を選ぶときのポイント


赤ちゃんに枕を使用しはじめる目安の時期、ベビー枕の形状などについて紹介してきました。

1歳頃から購入を検討するケース、それ以前にドーナツ枕や傾斜枕を購入するケース、あるいは人から譲り受けたりプレゼントされたりと、様々な状況があるでしょう。ここでは素材、洗いやすさ、硬さ、飾りなど、枕選びのポイントや注意点を解説します。


●肌に優しい素材にする


赤ちゃんの肌は敏感で刺激に弱いため、表面のカバーは天然素材を使用した通気性や吸水性に優れたものがよいでしょう。綿100%のコットン素材でタオル地(パイル地) 状のものが肌触りもよく、デリケートな赤ちゃんにおすすめです。有機栽培でつくられたオーガニックコットン素材などもよく選ばれています。夏場は肌触りが快適で寝心地もよい、ガーゼ素材やメッシュ素材もおすすめです。

●洗いやすさを考慮する

洗いやすさや乾きやすさも、枕を選ぶ重要な要素です。赤ちゃんは寝汗をかきやすく、よだれもよく出します。また、ミルクの吐き戻しで枕を汚すことも多いです。枕を清潔に保つためには頻繁に洗たくする必要がありますが、その際、枕カバーだけでなく、枕本体も丸洗い可能なタイプを選ぶと便利でしょう。中身がポリエステル素材なら簡単に水洗いできて乾燥もしやすく、衛生的です。

なお、ベビー用の枕を洗う際は、赤ちゃんのデリケートな肌に配慮した、赤ちゃん用の洗剤の使用をおすすめします。
たとえば「アラウ.ベビー 洗たくせっけん」は、植物性の洗浄成分で柔軟剤なしでもふっくら、やわらかい洗い上がりになります。合成界面活性剤や合成香料は無添加で、皮ふ科医による乳幼児安全性テストも実施しています。(※すべての安全性を保障するわけではありません)

◎洗たくができない場合の対処法
枕の素材や天候によっては頻繁に洗濯できないケースもあるでしょう。その場合は、天日干しや、水を含ませた布で優しく拭き、枕を清潔に保ちましょう。また、枕にガーゼ素材の枕カバーなどを装着してこまめに交換すれば枕の汚れを防げます。枕カバーは枕にぴったりフィットする飾りのないものを選び、赤ちゃんの鼻や口を覆ってしまわないように気をつけましょう。

●枕は硬めのものを選ぶ

赤ちゃんの枕は窒息事故を防ぐために、固めのものを選びます。ふかふかした柔らかいものは、赤ちゃんが寝返りなどでうつぶせになった場合に顔が埋まり、鼻や口を塞いで呼吸できない状態にしてしまうおそれがあるため、避けましょう。

なお、寝具についても、かけ布団は払いのけやすいもの、敷き布団やマットレスは硬めのものを選ぶことが大切です。

●余分な飾りが少ない枕を選ぶ

ベビー用の枕には、インテリアにもなるような、おしゃれで可愛いデザインのものが市販されていますが、窒息対策の観点から余分な飾りの少ないものを選びましょう。赤ちゃんが寝返りした際に飾りが口や鼻を覆ったり、首にリボンなどが巻き付いたりして呼吸を止めるおそれがあるからです。

枕の使用を無理に急ぐ必要はありません


ベビー用品売り場などで、新生児用・低月齢児用などが売られているのを見ると、「その時期から必要なのかな?」などと思うかもしれません。可愛らしくて魅力的な枕なら、我が子の寝姿を想像してなおさら買ってあげたくなるでしょう。

また、「頭の絶壁防止」「吐き戻し防止」などのキャッチコピーを見ると、「子どものために買わなくてはいけないのか…」とも思ってしまうかもしれません。これまで説明したように、赤ちゃんの体の成長と窒息などのリスクを考えると、枕の使用開始時期を検討する目安は1歳ごろになります。無理して使用を急ぐ必要はありません。

ドーナツ枕も有効性や安全性が実証された訳ではありませんし、多少の頭の歪みは成長すれば自然に解消されることが多いようです。もし頭の歪みなどが心配になるなら、今まで多くの赤ちゃんの誕生や成長を見てきた産科や小児科の医師、助産師などに相談してみるとよいでしょう。



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