においつわりを楽にする!頑張りすぎるママに知ってほしい6つの対策
監修:古市 菜緒
- プロフィール
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助産師としてこれまで10,000件以上の出産に携わり、5,000人以上の方を対象に産前・産後セミナー等の講師を務める。助産師のレベルが世界的に高いAUSとNZで数年生活、帰国後バースコンサルタントを起ち上げる。現在は、高齢出産の対象であるOVER35の方にむけた「妊娠・出産・育児」をサポートする活動を行う。その他、関連する記事の執筆やサービス・商品の監修、企業のセミナー講師、産科病院のコンサルタントなどを務める。
プレママや妊娠したばかりのママの心配事の一つに「つわり」があるでしょう。妊娠初期に出現し、多くのケースでは妊娠中期に入る前に治まる、吐き気・嘔吐(おうと)などの特有な症状を指します。
つわりの症状には、吐き気が続く「吐きつわり」、食べていないと気持ちが悪くなる「食べつわり」など、いくつかの種類があります。なかでも多いのが、「におい」に過敏に反応して吐き気や嘔吐が生じる「においつわり」です。
つわりの症状が続く間は仕事や家事、日常生活に大きな支障が出るなど、苦しむ妊婦さんが多く、「出産までの間で一番辛かったのがつわりの時期」と言うママもいるほど。
今回の記事では「においつわり」の基礎知識を説明した上で、妊婦さんの症状が少しでも軽減し、ストレスをあまり感じずに済むような6つの対処方法を紹介します。
妊娠中に訪れる試練の一つ「においつわり」
「においつわり」は妊娠初期に多く、いくつかのつわり症状のなかでも出現しやすいタイプです。すべての妊婦さんに出現する訳ではありませんが、街中などで急に吐き気を催したり吐いてしまったりと、「においつわり」に苦しむ方が多くいます。
対処法に進む前に、まずは「においつわり」とはどのような症状か、どのようなタイミングに起きるのか、きっかけになりやすいにおいの例などを紹介していきましょう。
においつわりとは?
「においつわり」は、妊娠中に起きるつわり症状の一つです。特定のにおいを嗅ぐと胃がムカムカしたり吐き気がしたりするほか、実際に吐いてしまうケースもあります。
「においつわり」の症状が起こりやすいにおいの例を後ほど紹介しますが、対象となるにおいには個人差が大きく、今まで気にならなかったにおいや好きだった香りが突然不快に感じるケースも多くあります。
症状が重い場合は、食欲が出ず、水分すら摂れないケースもあり、栄養不良や脱水に注意が必要です。
においつわりになりやすいタイミング
一般的には、妊娠5週目から症状が始まり、8週目から10週目ごろにピークを迎え、12週目ごろには徐々に治まっていくとされています。ただし個人差があり、妊娠後期や出産まで続くケースもあるので注意しましょう。
また、症状は特に早朝や空腹時などに出やすいとされています。
気持ち悪くなるにおいの例
「においつわり」の妊婦さんが「気持ち悪くなりやすいにおい」を一部紹介しましょう。ただし、対象となるにおいは個人差が大きく、多様性があります。
- ご飯が炊けるにおい
- たばこのにおい
- 食べ物のにおい(香りが強い物や魚・肉、揚げ物など)
- ネギ、玉ねぎ、にんにくなどの薬味のにおい
- 人混みのにおい
- 中高年男性の加齢臭
- シャンプーやリンスのにおい
- お風呂やお湯の湯気
- 洗剤や芳香剤のにおい
- 化粧品、香水、ヘアワックスのにおい
- 生ごみや排水溝のにおい など
上記のにおいの多くは、妊娠前に日常的に嗅ぐ機会があったにおいです。しかし、つわりによって敏感に反応するようになります。特に「アンモニア臭」が苦手になるケースが多く、トイレや汗のにおいだけでなく、野菜やお肉などの食物や香料に含まれているわずかなアンモニア臭でも感知し、症状が出現してしまうのです。
「においつわり」の症状が現れた際は、「どのようなとき」に「どのにおい」を嗅いで気持ち悪くなったのかを把握し、苦手になったにおいの傾向をつかんでおくと対処がしやすくなります。
においつわりが起きる原因
つわりが起きるメカニズムや原因は、まだ解明されていません。ただし、次の要因が関係していると考えられています。
- 妊娠によるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の増加:脳の嘔吐中枢を刺激する
- 妊娠による黄体ホルモン(プロゲステロン)の増加:体内にガスが溜まりやすくなり不快感や吐き気に繋がる
- 妊娠中の代謝の変化による栄養不足:ビタミンの不足など(ビタミンB6がよく指摘される)
- 妊娠による自律神経の乱れや身体・環境の変化によるストレス:症状を重くする要因になる
妊娠によってホルモンバランスや血流、自律神経などに大きな変化が生じます。また、出産への不安、身体や環境の変化などが心身にさまざまなストレスをもたらすでしょう。さまざまな要因が複雑に組み合わさって、つわり症状が出現するようです。
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においつわりを和らげる6つの対処法
「においつわり」の症状は、妊娠12週ごろには落ち着くケースが多いです。しかし症状が続く期間はつらく、日常生活にさまざまな影響が出るほか、悪化して食事や水分が喉を通らなくなってしまうと、栄養不良や脱水症状を起こすケースもあります。
つわりがさらに重篤化すると、治療が必要な妊娠悪阻に移行します。妊娠悪阻になると、極めて強い吐き気や激しい嘔吐を繰り返し、体重減少や重度の脱水が生じて、おなかの赤ちゃんにも影響が出るので注意が必要です。食事や水分が摂れなくなった場合が受診の目安になります。
妊娠悪阻になる前に、正しい対処が必要です。ここでは6つの対策を紹介します。
【対策1】不快なにおいを避ける
「においつわり」の基本的な対策は、「不快と感じるにおいを避ける」こと。特定のにおいがつわり症状のきっかけや悪化の原因になるため、そのにおいを避けるだけで楽になるケースも多いです。
まずは、自分のつわり症状を引き起こす「特定のにおい」を探り、OKのにおいとNGのにおいを調べます。NGのにおいがわかれば、家の中の発生源を捨てたり遠ざけたりするとよいでしょう。外出先でも、NGのにおいに近づかないようにします。
【対策2】体調を整える
自身の体調管理も重要です。睡眠が不足していたり体調が悪かったりすると、症状がひどくなります。
「身体がつらい」と感じた場合は、以下を実践してみてください。
- 横になって休む:疲労を溜めない
- 身体を締めつけない服に着替える:胸やお腹を圧迫しない
- 水分補給やうがいをする:口の中をさっぱりした状態にする
- 気分転換をはかる:ストレスを溜めない
意識して心身を整えることがにおいつわりを和らげる大切なポイントです。
【対策3】好きな香りを持ち歩く
「においつわり」になっても、自分が好きで不快に感じない香りを持ち歩くとよいでしょう。症状が出そうな不快なにおいに遭遇した場合は、好きな香りを嗅いで乗り切ります。
シトラス系やレモンなどの柑橘系の香りで、症状が楽になるケースが多いです。自分に合った香りを探してみてください。
【対策4】マスクをする
外出中は、マスクをつけるのも重要な対策の一つです。マスクによって不快なにおいを軽減します。自分が好きと感じるアロマなどをマスクにつけると、さらに効果的です。
家の中にもにおいは多くあります。マスクによる息苦しさなどがなければ、家の中でマスクを着用するのもよいでしょう。
【対策5】酸っぱい物を食べる
レモンや梅干し、お酢などの酸っぱい食べ物に含まれるクエン酸は、アンモニア臭を緩和させる作用があるとされています。また、口の中がさっぱりするため、吐き気の予防にも効果的です。
妊娠すると、多くの妊婦さんが酸味を好む傾向になりますが、アンモニア臭を避けるための無意識の行動なのかもしれません。ぜひ、好んで食べられる酸っぱい物を見つけてみましょう。
【対策6】食事は冷まして食べる
食べ物のアンモニア臭は、温かい状態だと感じやすく、冷えた状態だと感じにくい特徴があります。そのため、においが気になる場合には冷やしてから食べることをおすすめします。
ただし、冷蔵庫で冷やすとにおいが移りやすいため、ラップをかけたり保存容器に入れたりするなどの工夫をしましょう。
においつわりを乗り切るために大切なこと
「においつわり」を乗り切るためには、ひとりで悩まず、周囲の人々に打ち明けて理解や協力を得る必要があります。においの発生は、自分だけでコントロールできるものではないためです。また、症状がつらいときには、積極的に家事や仕事のサポートを得ることも重要になります。
加えて、自分でも対策をしっかりとって体調を管理し、症状を悪化させずに日常生活を送る方法を工夫しながら探ってください。
周りの人の理解
「においつわり」は、家庭や職場などでほかの人が発生させるにおいに反応して症状が悪化するケースが多いため、パートナーやその他の家族、職場の上司・同僚、友人などに理解や協力を求めましょう。「どのようなにおいで、どのような症状が出るか」などを具体的に伝えるのがポイントです。
たばこや食べ物、お酒のにおいがついたまま近寄らないように配慮してもらったり、苦手な香水をつけている人には「においつわり」の間だけ距離をとってもらったりできるように相談してみてください。パートナーや家族には、においを極力減らしてもらうために、入浴してから部屋に入るようお願いするのもおすすめです。
生活の工夫
さまざまな場面で、苦手なにおいに接しないように工夫していきます。たとえば職場ならランチタイム時に人が少ない場所を選び、においが気にならない食品や果物などを食べるとよいでしょう。
また、外出時は人混みを避け、通勤ラッシュがつらい場合は可能なら上司に時差出勤や在宅勤務を相談してみてください。
無理をしない
身体がつらいときは無理をせず休むことが重要です。疲労が溜まると、つわり症状が悪化するケースがあります。家事や仕事を頑張りすぎず、身体がつらいときには周囲に頼りましょう。
パートナーや家族、同僚のほか、行政や民間のサービスを依頼するのも一つの手です。たとえばハウスキーパーを頼んだり、上の子がいる場合はベビーシッターや一時保育を依頼したりするなど、無理をしすぎないようにしましょう。
栄養素や水分を摂取する
においで気持ち悪くなると、食べ物や水分をなかなか口に入れられず、栄養不足や脱水に陥りやすくなります。食べやすい物をストックして小まめに食べ、水分を補給しましょう。栄養不足や脱水は体調をさらに悪化させ、胎児の成長に影響が出る可能性もあります。
水分を摂取する際は、少量ずつ水やお茶を摂取してください。また、後味がスッキリする炭酸水を好んで飲む方も多くいます。食事を全くとれない場合は、スポーツドリンクや経口補水液を摂るのもいいでしょう。不足しがちな塩分などの電解質を補給できます。しかし、食事がある程度摂れている場合は、塩分と糖分の摂り過ぎになってしまい、妊娠高血圧症や妊娠糖尿病を起こすリスクが高くなりますので注意が必要です。
食べ物では、においの少ない物や酸味のある物(柑橘類、ヨーグルト、酢の物など)、味噌汁などが食べやすくおすすめです。
つらいと感じるボーダーラインを見つけて「においつわり」を乗り越えよう
「においつわり」のつらい症状は、妊婦初期の大きな悩みの一つです。つわり症状が落ち着くまで苦しい時期かもしれませんが、生活の工夫や周囲の協力を得て乗り切りましょう。
人間は生きている以上、無臭の環境で過ごすことはできません。早めに「においがつらいと感じる自分なりのボーダーライン」を見つけて、ラインを超えないように工夫すると日常生活を送りやすくなります。
つわりに負けないようにと、仕事や家事を頑張りすぎるのもよくありません。疲労やストレスは、つわり症状の悪化を招きます。仕事や家事と、症状のコントロールのバランスのなかで「ほどよい」ところを見つけ、適度にリラックスしてなるべく気楽に過ごしながら、つわりの時期を乗り越えてください。